2024年2月3日、関西の小学6年生より、総合的な学習の探求課題への質問を受けました。
絶滅に興味を持ち、「人と動物はこれからも共生できるのか。」という課題を立てられました。
2月5日、当代表理事菅野正巳が以下のとおり回答しました。
回答内容は、他の同様な疑問を持つ国内外の子どもたちにも役に立つ内容だと思わましたので、ここで広く共有させていただきます。
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はじめまして、この度は野生動物との環境に興味を持って頂き、感謝します。
近頃は、人間社会の問題が複雑化していて、なかなか野生動物の問題に関心を持つ機会も少なくなっているのでは?と肌身で感じるのも禁じ得ません。
さて、質問への私なりの意見になりますが、参考にして頂けたらと思います。
「人と動物はこれからも共生できるのか」について、
共生は大切でなおかつ難しい問題です。
例えば、近年全国で話題になることが多くなっている熊の問題がありますね、自分達が暮らす近くにしょっちゅう出没するようであれば、多くの人達は熊との共生などは考えられない、と思うのは当然なことと考えます。このような、考え方は私達人間主体での都合での結論であり、自然とのバランスを考えると大変危険なことだと思います。私もシマフクロウの調査で森の中に入っている時に、何度もヒグマと出会っていますが、今のところ襲われたことはありません。ですが、決してヒグマが怖くないわけではありませんよ、私はヒグマを森づくりの達人と思っています。彼らは実りの秋には、様々な木の実を食べて、あちこち歩き回って食べた木の実を糞として出すことで種まきをしていて、その行動が生物多様性に貢献していると科学的にも証明されるようになりました。また、川に鮭がのぼる時期には、川で捕った鮭も山に運びその鮭を山のあちこちに埋めるのです。その埋められた鮭から土中に木の生育に必要な栄養素がもたらされるのです。これを我々人間が行うとなれば莫大な浪費を必要となるでしょうね。なので、彼らが窮地に立たされ無いように、むやみに襲われたりされないように、細心の注意をしながら調査をしているのですが、そんな中でも出会いは避けられないほどに、シマフクロウの生息地周辺にはヒグマがいることが多いのです。熊が怖い、嫌いだからとの理由で駆除してしまうと、山が荒れてしまうことにつながりかねます。そうなれば、私達が保護活動をしているシマフクロウの生息地も荒れてしまうことにつながることになることでしょう。基本的な考えとして、この地球上に生きている動植物で居なくなって良い生き物は無いと考えますし、みんな、誰かとつながっています。その誰かが、絶滅してしまうと、今すぐではなくても、じわじわと何らかの悪い影響はあると考えます。人間の側で色々な動植物の保護活動をしても、長い目で見るとやがては限界が避けられない状況も出てくるかも知りませんね。
さて、質問への回答をしていきましょう。
「質問1、シマフクロウは今と昔で生息数はどうなっていますか。」
昔、北海道に開拓民(屯田兵)が流入したころは、北海道中に生息していたと見られます。彼ら(シマフクロウ)の主食は魚なので河川を中心に1000羽以上が生息していたと考えられています。その後、北海道は札幌をはじめ人々の流入が増えるにつれ、各地で開発が進みシマフクロウの暮らしていた森の消失により、その数を減らし、1980年代には100羽以下になるまで、その数を減らしてしまいました。
この時期に、絶滅危惧種に指定され、環境庁(当時)を主体に、シマフクロウ保護増殖事業が始まり、現在までにシマフクロウを絶滅から遠ざけるように、様々な取り組みをして来た結果、現在は100つがいまで回復してきました。数の上では増えたことで明るい話題となっていますが、そもそも、シマフクロウが減った原因である「生息可能地の減少」の解決にはなっていません。今、大きな課題として生まれてきた新たなシマフクロウ達が安心して暮らせる場所の確保と保全がとても大事であると考えます。
「質問2、生息数が減ったのは環境が変わったからだと考えますか。」
一番の要因は、各地で人間にとって住みやすいことに重点を置いた開発事業によって、シマフクロウが何百年も代々住み続けて来た森の消失、河川改修による餌資源の枯渇などが考えられます。
現在においては、まだまだ小規模ではありますが、生息可能な場所を将来シマフクロウが住めるように、と地域住民の方々と協力して環境整備の環を広げていけたらと、シマフクロウ・エイドは活動しています。
大変長くなってしまいましたが、ご理解いただけたでしょうか?
私たちの活動は、シマフクロウだけを守る活動ではありません。冒頭にありますように、生物多様性を重視して、自然界のバランスを良い方向に進めるように、「つながり」を考えられるように、地域の子供たちとフィールド学習を通じて理解を深める活動をしています。
今回の回答に、むずかしい、理解出来ない、等あればすぐに連絡をくださいね。
NPO法人シマフクロウ・エイド
代表理事 菅野 正巳
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