なわばりに魚が少ないと、子どもは育てられません。だから人工的に池をつくり、ヤマメなどの魚を放流して、子育てできるように支援します。
しかし、給餌池の設置は簡単ではありません。水が枯れないように井戸を掘る必要があったり、春には凍って壊れた池の修理が欠かせません。また、魚を狙ってアオサギやオジロワシ、ミンクやイタチ、キツネなどが集まってきます。他の動物の侵入を防ぐ手立ても必要です。
そして、魚を放流するためには、お金がかかります。給餌池の維持・管理には、人手もお金もかかるのです。本当は、川に魚がたくさんいるのがいちばんなのですが、人が魚のすめる環境を壊したので、食糧支援はやめられません。
1羽のシマフクロウが1日に食べる魚は、20cmのヤマメで2~4匹です。子育ての頃には、夫婦と子どもの合計約4羽が食べるので、4倍の16~20匹になります。1匹のヤマメのお値段は、約100円。一晩におよそ2,000円の食費代になります。1ヶ月では6万円。1年を通して生きた魚を池に放しているので、その金額はかなりのものになります。
給餌活動は国の予算で全体をまかなえていません。足りない分は民間の資金に頼っています。
国の監督下のもと給餌池を設置し、不足している食である魚を補っています。
その一つに私たちが関わっている池があり、ヤマメの放流や池の掃除・補修などを行っています。おさかな寄付を募集し、集まった資金で活きたヤマメを購入して、シマフクロウへの食糧支援を行っています。
これまで約600の個人・法人の皆さまからおさかな寄付を頂き、全額活魚購入代に充当し、数十羽のヒナがぶじに巣立つことが出来ました。
おさかな寄付で、 間接的にシマフクロウの保護活動に参加いただけます。
シマフクロウの若鳥の安定した未来に向けて、環境の保全が今後の課題となる中、当NPOでは、これまでの主な保護対策のひとつ補助給餌の実態等を把握する初のモニタリング調査を実施しています。
その成果は、シマフクロウの自立を促進していくための、今後の保護・保全対策に活用していく予定です。
本調査は、個人・法人からのご寄付や助成金で、2014年より準備を始め2016年夏より調査を開始、現在継続中です。
引き続き、守りたい寄付でご支援をよろしくお願いいたします。
好んで巣に利用する天然木の洞は、ほとんど見られなくなりました。しかし、大きな木はまだ残っています。これに巣箱をかければ、子育てが可能になります。
環境省による巣箱かけ事業により、今までに、多くのシマフクロウ用の巣箱をかけ、成果をあげています。ほとんどが巣箱で子育てしている地域があるくらいです。巣箱には子育ての成功率を高める効果もあります。
使いやすい大きさや形に作られた強化プラスチック製の巣箱を、良い条件を満たす場所にかけます。雪や雨が巣の中に入り込まないよう巣穴の向きにも配慮します。なわばり内には、複数の巣箱をかけ、シマフクロウがより良い巣を選べるようしています。
巣箱をかけるためには、木に登らなくてはいけません。大きく、重たい巣箱を木の上に持ち上げる必要があります。そのためには、登山用のザイルが役立ちます。これらを使い木に登る技術やロープワークなど、シマフクロウ保護のためには、いろいろなテクニックが使われています。
巣箱をかけるのに適した場所を事前に調査したり、周辺の生息確認や設置後の巣箱の利用状況を調査し、生息地パトロールを独自の財源で行っています。
家探しをしている若鳥への繁殖支援として、環境省が行っている巣箱かけ事業に協力しています。
● 守りたい寄付実績
数がとても少なくなったシマフクロウを保護には、1羽、1羽の基本情報が重要です。いつ、どこで生まれたのか、両親・兄弟姉妹はだれ、性別は何に、といった情報です。
それには、印をつけるやり方が効果的です。個体を識別できる足環をつけます。これはバンディングと呼ばれ環境省の事業で行われています。
足環をつけるために、ヒナが巣にいるうちに捕まえます。体重をはかり、血を採取して性別を調べます。足環をつけた後、ヒナは巣に戻します。天然記念物のシマフクロウを捕まえるには、特別な許可が必要です。
シマフクロウの鋭い爪 カラスの巣に近づいて、親鳥から攻撃を受けた経験はありませんか?大事なヒナを狙うものは敵です。バンディング中、シマフクロウに襲われることがあります。大きな体、強靭な爪。その攻撃力はカラスの比ではありません。しかも、不安定な木の上にいるとき体当たりされると、本当に大変です。そのため、作業時には、ヘルメットが欠かせません。
バンディングには、どの巣にヒナがいるかをあらかじめ知っておく必要があります。独自の調査を実施し、事業に協力しています。その情報提供は、シマフクロウ・エイドの重要な活動のひとつになっています。これまでに、未知繁殖地3地域を発見し、出生地の確認や亜成鳥の行動データの取得等でシマフクロウの生態解明に役立っています。
● 守りたい寄付実績
巣箱はかけておしまい、と言うわけではありません。アフターケアをしっかり行います。
巣箱の中の卵やヒナ、親鳥まで襲う動物がいます。最近は、以前はペットで飼われていたアライグマも野生化して増え、巣箱を荒らす危険性が高まってきました。そのため、環境省の巣箱かけ事業では同時にこれらの捕食動物に襲われない様に対処しています。
巣箱をかけた後に、パトロール(見廻り)や利用状況の調査を行っています。アライグマやミンク等外敵の足跡や痕跡がないかもこの時に見て回ります。もし、アライグマが発見された場合には関係機関と協力しながら、その排除に努めます。
また、近年は北海道でも台風による甚大な被害も増えてきており、シマフクロウの生息地も巣箱が壊れていないか、生息地への人の侵入はないか等、生息域全体の異常がないかも見回ります。営巣木や巣箱が利用されているか、ヒナが育っているか、などの調査も欠かせません。
シマフクロウは、1羽でも事故死すると、絶滅の危機が近づくほど数が少ない鳥です。子育て中の親鳥が事故にあった場合は、なおさらです。
交通事故、電柱上や電線衝突による感電事故、魚網に絡まる事故などが発生しています。交通事故、感電事故については、対策がとられ始め、効果が現れています。
ケガや病気で動けなくなったシマフクロウが保護される場合があります。環境省はそれらの傷病鳥を保護し、治療後元気になった場合は野外に帰しています。後遺症で野外復帰できないもののうち繁殖できる鳥は、人工化での子育ての試みも始められています。
感電事故防止のため、電柱の先に止まり木を取りつける対策を電力会社にお願いし、いくつかの場所で設置されました。今後も必要な場所に、とまり木の取り付けを働きかけていきます。その他に、交通事故対策で土木現業所にお願いし、鳥類防止柵が設置されました。
また、シマフクロウの生息地をパトロールし、ケガや病気などの異常が認められた場合には、環境省や関係者への連絡、傷病個体の収容等の保護を行っています。
巣立った若鳥は、親のなわばりでしばらく過ごし、姿が見られなくなります。若鳥の行方を調べることが、保護のために重要です。なぜなら、旅立った若鳥が、新たな場所で暮らし、つがいをつくり、子育てを行わなければ、保護の効果が上がったと言えないからです。
森の中でシマフクロウを見つけ、足環の番号や色を確認する調査を行っています。
電波発信機を若鳥の体に装着し、その信号をアンテナで拾う調査方法は、木々や地形の起伏にはばまれ、有効ではありません。糞や羽などのわずかな痕跡が重要な手がかりとなります。
経験を積んだ調査員の努力やわずかな目撃情報をもとに地道な調査が継続して行われています。
前身の「シマフクロウを増やす会」の時から観察を続けているシマフクロウから、10年余りで数十羽の若鳥が育ち、旅立っています。しかし、移動後の情報を得たのは、ほんの一握りです。中には数十キロを移動した若鳥もいますから、広範囲の調査が必要です。
分散個体調査には、人手や時間がまだまだ足りない状況です。これらの活動は、独自の財源(守りたい寄付)で行っています。
シマフクロウについて知る日々の調査が欠かせません。シマフクロウ・エイドは、経験を積んだ調査員による調査の成果を、「人材育成や環境教育、PR活動」などに活用し、普及啓発を推進しています。
シマフクロウがいない場所でも、魚の多い川があったり、大木が生える森が残っていれば、今後、若鳥が移住し、子育てを行う可能性があります。そんな場所を探し、保全することも大切な保護活動のひとつです。
生活に足りないものを補うため、巣箱をかけるなどの整備を行えば、旅立った若鳥の定住が見込めます。人工繁殖させたり、ケガが治ったシマフクロウを野外に帰す場所にもなります。
若鳥の移動を助けるため、川沿いの木を残したり、植林することも重要です。将来に向けた森づくりなどの植林も必要です。
生息できそうな森や川を調査しています。生息の可能性がある場所には、巣箱をかけられるよう調整し、若鳥など新たなシマフクロウの定着を調べています。2009年には地元造船所にて巣箱を制作し、環境省の巣箱かけ事業にて釧路管内山林に巣箱を設置。その後モニタリング調査を実施中です。これらは、独自の財源で行っています。
また、生息地と生息地をつなぐ緑の回廊ができるように、関係機関と協議し調整を行っています。
巣箱や給餌池に人が近づきすぎると、シマフクロウは警戒心が強いために子育てをやめることがあります。バードウォッチングや野鳥写真愛好家に人気がある鳥のため、その可能性は絶えずあります。
ハンティングや山菜取りに来て、知らずに接近する場合もあります。
人が子育ての邪魔をしないように定期的に生息地をパトロールする活動が行われています。もし、巣や給餌池の近くに人がいた場合は、その場から立ち退いてもらうようにお願いしています。
子育ての時期を中心に、いくつかの生息地をパトロールしています。繁殖状況を調べたり、天候や野生動物による影響についても気を配っています。これらは独自の財源で行っています。シマフクロウの暮らしの改善や、人間社会との軋轢を改善していくために役立てています。