卵はほとんど真っ白です。ニワトリの卵をひとまわり大きしたくらいで、少し丸みをおびています。
3月頃、巣に普通2個の卵が産み落とされます。メスだけが卵を暖め、35日ほどでヒナが誕生します。その間、オスは巣に入ることがほとんどありません。代わりに食べ物をメスに運びます。
毎年、順調にヒナが生れ、育っても、2羽しか増えません。一度にたくさん増えることはありません。少なく産んで、大事に育てる。1羽、1羽が大切な理由がここにあります。
メスは最初の卵から2、3日後にもう1個産みます。そのため、ヒナの生まれる時期が違い、兄弟に大きさの違いが見られます。早く生まれたヒナが、早く大きくなり、早く巣立ちします。
親が巣に十分な食べ物を運べなかった場合には、大きなヒナしか育たないことがあります。食べ物を分け合い、2羽とも育たないよりは、1羽でも巣立つほうが生存に有利です。
旅立った若鳥は、自分のなわばりとつがい相手を求め放浪します。
つがいをつくる行動が見られるのは、生まれて2年を過ぎた頃からです。シマフクロウは鳴き声で相手を探し、互いの性を判断します。しかし、生息数が少ないため、独身の異性と出会うチャンスは少なく、長い間1羽で過ごすものもいます。
ようやく見つけた異性に相手がいる場合も珍しくありません。こんな時、つがいの入れ替わりが起こることがあります。それは戦いを伴う激しいものです。オス同士の争いの場合、太く大きな声でよく鳴く方が、メスに気に入られ勝利を得るようです。
つがい相手の入れ替わりは、伴侶となわばりの両方を得るか失うかの厳しい生存競争です。
出合った異性が兄と妹、もしくは姉と弟の場合があります。また、長い放浪生活の末、生まれた場所に戻り、自分の親とつがいになるケースもあります。いずれも個体数が少なく、生息地が限られるために起こる現象です。
近親結婚は、望ましいものではありません。同じ遺伝子を多く持つもの同士の間に生まれた子どもには、先天的な奇形や遺伝子病が発生する可能性があります。
どの動物も子育ては大変です。シマフクロウも例外ではありません。ヒナの成長にあわせ、食べる量は飛躍的に増えます。そのため、両親は昼も狩りに出かけるようになります。
魚が少ないなわばりは、給餌池に頼らざるを得ません。しかし、予算不足で魚を満足に買えないことがあります。これは人の責任。解決すべき問題です。
ヒナは2ヶ月たたないうちに巣から出てきます。そして2度と巣に戻りません。巣立ちです。この時期、ヒナはほとんど飛べません。地面に落ちると、木をよじ登って安全な場所までたどり着きます。キツネや野良犬に襲われるのはこの頃です。ヒナのそばでは、親が警戒し、外敵が近づくと攻撃します。
ヒナは飛べるようになっても、しばらくは怖いもの知らずで、危険を察知できません。いつも親はヒナの安全に気を配っていなければなりません。
日本にはいないはずのアライグマが、北海道に住み着くようになりました。愛嬌のある姿とは裏腹に、シマフクロウにとって、キツネより恐ろしい動物です。
アライグマは水辺をすみかとするため、シマフクロウの生活環境に入り込んできます。そして、木に登り、巣の卵やヒナ、あるいは卵を暖めている親まで襲う危険性があります。まさに害獣です。この強敵を持ち込んだのは人間。人の手でアライグマの脅威を取り除く責任があります。
調査・パトロールを行い、その発見に至った場合は関係機関と協力しながら排除に努めています。
若鳥は1年ほど過ぎると、新天地を求め、親のなわばりから出ていきます。オスの若鳥で早く、メスは遅い傾向があります。しかし、2年以上も親のなわばり内に居候する若鳥もいます。
旅立った若鳥は、自分で食べ物を見つけ、安全を確保しつつ、子育てができる場所を探します。魚が豊富で、巣にできる大木があり、ゆっくり休めるねぐらもみつけられる、そんな三拍子そろった場所を見つけたら、たいていは別のシマフクロウのなわばりです。すぐに追い出されてしまいます。
理想の場所は簡単には見つかりません。しかし、巣箱をかけると利用するかもしれません。給餌池があるとなわばりをつくるかもしれません。人の援助で若鳥の未来が開ける可能性があります。
若鳥がどこに行ったか調べるには、足環をつける必要があります。足環つけをバンディングと呼んでいます。いつ、どこで生まれたかがわかるように、番号や記号、カラーで識別された足環を巣立ち前のヒナにつけます。野外でシマフクロウをみつけ、足環を見ると、どこの誰かがわかります。
昼間、森でシマフクロウを見つけるのは大変です。ようやく見つけても、長いとは言えない足にはめられた足環を見て、識別するのは至難の業です。電波を飛ばす発信装置をつけ、人工衛星から位置をキャッチする。そんなハイテク技術は今のところ使われていません。若鳥がどこへ行ったかを調べるには、経験を積んだ調査員の能力と体力に頼っています。