ユーラシア大陸の北東部に住んでいる場所が限られています。ロシアと中国の国境周辺が生息場所の中心です。そこには針葉樹や広葉樹が混在する森が広がっています。
同じような森が残る北海道の東側にも暮らしています。しかし、本州から南では見ることのできない鳥です。
シマフクロウは漢字で書くと、島梟。この島は、北海道をさしています。ロシアと中国国境に棲むシマフクロウは亜種になります。
国後島や択捉島、サハリンにも生息しています。
現在、北海道でシマフクロウが暮らしている地域は、知床半島とその周辺、根室半島とその周辺、東部太平洋側、十勝地方、日高地方などです。これらの地域に共通する点は、針葉樹と広葉樹が入り混じった森が他の地域に比べて残っていること。そして森には、多くの魚が暮らす川が流れていることです。
シマフクロウは人里はなれた深山幽谷の鳥ではありません。人の暮らすそばで共に生きる鳥でもあります。それは、アイヌの人たちがコタンクルカムイ(村の守り神)と敬っていたこととからもわかります。
北海道では、人の影響を受けずに暮らすシマフクロウはほとんど居ないと思われます。それはとりもなおさず、私たちが彼らの暮らしを知り、邪魔をしないように配慮しなければいけないことだと思います。
なわばり争い。この言葉は、巣をつくる場所、食べ物、安心して休む場所、この3つの条件を求めてシマフクロウどうしが争う時に使います。
なわばりが持ててはじめて、子育てが可能になるのです。なわばりの大きさは、食べ物の量や地形、隣に他のシマフクロウがいるかどうかで変わってきます。
シマフクロウは一年を通して、自分のなわばり内で生活します。ですから食べ物の少ない冬に、大きな給餌池をつくって、大量の魚を放流しても、なわばりの持ち主しか利用できません。一度に合理的に簡単に、というわけにはいきません。シマフクロウ保護の難しいところです。
巣選びは大事業です。1ヶ月以上卵を暖め、ヒナを育てる場所になるからです。
なわばりには、巣にできる場所が必ず複数あります。天然の巣の多くは、大木にできた洞です。樹洞の高さ、入り口の向き(南向きを好む)、周りの様子、狩場までの距離など、いろいろな条件が必要です。
しかし、大きなシマフクロウが利用できる樹洞のある木は、選べるほどありません。そのため、多くのシマフクロウは、環境省の巣箱かけ事業で樹にかけられた強化プラスチック製の人工の巣箱を使っています。
人工巣箱のほとんどは、漁船と同じFRPと呼ばれる強化プラスチックで作られています。以前に比べ、かなり軽くなりました。しかし、ドラム缶ほどの巣箱を背負い、道なき森を歩き、沢を渡り、目的の大木までたどり着くのは重労働です。しかも、その巣箱を木の上に吊り上げ、固定する作業が待っています。体力はもちろんですが、木登りが上手にできる身軽さも必要です。
これに携わる保護の担い手が毎年、歳を重ね、作業が辛くなっています。新戦力の加入が望まれます。